で,何の勉強会かと云うと,Werding-Hoffman病と云う難病の少年……敢えて 名前を出します……児玉康利君の音楽を作る手伝いをすることのprojectとか 云うかそんな感じの勉強会で,以前,ICC主催で催された workshop 「楽器とアン サンブルの今とここ」の内容に興味を持った関係者の方がICCの方へ研究 会に参加してくれないかと声をかけて来てくれて,今日まで数回ICCも加わっ た勉強会が行なわれて来た.そいで,Workshop に artist として参加してい た僕も,Denmarkから解放されるのを待って,今日から参加と云うことになっ た.
彼の身体で彼が自分で動かすことの出来るのは眼球しかなく,言葉も当然全く 喋れない.ただ,人の言っていることはわかり,テレビも見ることが出来る. で,音楽が大好きで,先生の力を借りて幾つかメロディーを作って,arranger による編曲を経た彼のメロディーによるメッセージはCDになってこの間出来上 がった.今殆んど売り切れだそうだけれど,2nd press がもうじき出来上がる ので,どうぞ. 彼からの唯一の外界へのコミュニケーションの方法はメロディー,音楽を作る ことになりつつあり,それを何とか手伝おうと云うことになって,この研究会 が進められている.
ストレスを最小限にして,メロディーを作ることの可能なソフトをMaxを使っ て作ろうと云うことが当面の目標.前林さんは,Maxを使って康利君に使いや すい様なanalog sequencerの様なpatch を今回作って来た.きっと,当分,楽 しんで遊んでくれることと思う.
でもそのうち,彼の表現したいことが若し単純な旋律を作ることに収まらなかっ たら和声とか対位法とかの初歩をうまく彼向けに噛み砕いて嫌にならない様に 自然に教えていったりすることも必要になるのだけれど,彼がそれを受け付け なかった時,それが彼の能力に関係してそうなのか,彼の辛抱が単に足りない だけなのか,どうやって判断すればいいのかと云う問題が出てくるだろう.
身体的 Output が眼球の運動だけと云うのは,言いたいことがあった場合, 辛い状況だろうし,言いたいことを持つ意欲を維持するのも大変なことだろう.
こう云うことに感傷的にはあんまりならないし,なりたくないのだが,彼の底 抜けに明るいお母さんの彼を見つめる目を見ていると,切ない気分になって来 るね,やっぱり.