第四章 著作隣接権    第一節 総則  (著作隣接権) 第八十九条 実演家は、第九十一条第一項、第九十二条第一項及び第九十五条の二 第一項に規定する権利並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料及び第九十五 条の二第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。 2 レコード製作者は、第九十六条及び第九十七条の二第一項に規定する権利並び に第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の二第三項に規定する報 酬を受ける権利を享有する。 3 放送事業者は、第九十八条から第百条までに規定する権利を享有する。 4 有線放送事業者は、第百条の二から第百条の四までに規定する権利を享有する。 5 前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。 6 第一項から第四項までの権利(第一項及び第二項の二次使用料及び報酬を受け る権利を除く。)は、著作隣接権という。  (著作者の権利と著作隣接権との関係) 第九十条 この章の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならな い。    第二節 実演家の権利  (録音権及び録画権) 第九十一条 実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。 2 前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾(第百三条において準用 する第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。以下この節及び次節におい て同じ。)を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、 これを録音物(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。) に録音する場合を除き、適用しない。  (放送権及び有線送信権) 第九十二条 実演家は、その実演を放送し、又は有線送信する権利を専有する。 2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。  一 放送される実演を有線放送する場合  二 次に掲げる実演を放送し、又は有線送信する場合   イ 前条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録音され、又は録画さ れている実演   ロ 前条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されてい るもの  (放送のための固定) 第九十三条 実演の放送について前条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得 た放送事業者は、その実演を放送のために録音し、又は録画することができる。た だし、契約に別段の定めがある場合及び当該許諾に係る放送番組と異なる内容の放 送番組に使用する目的で録音し、又は録画する場合は、この限りでない。 2 次に掲げる者は、第九十一条第一項の録音又は録画を行なつたものとみなす。  一 前項の規定により作成された録音物又は録画物を放送の目的以外の目的又は 同項ただし書に規定する目的のために使用し、又は提供した者  二 前項の規定により作成された録音物又は録画物の提供を受けた放送事業者で、 これらをさらに他の放送事業者の放送のために提供したもの  (放送のための固定物等による放送) 第九十四条 第九十二条第一項に規定する権利を有する者がその実演の放送を許諾 したときは、契約に別段の定めがない限り、当該実演は、当該許諾に係る放送のほ か、次に掲げる放送において放送することができる。  一 当該許諾を得た放送事業者が前条第一項の規定により作成した録音物又は録 画物を用いてする放送  二 当該許諾を得た放送事業者からその者が前条第一項の規定により作成した録 音物又は録画物の提供を受けてする放送  三 当該許諾を得た放送事業者から当該許諾に係る放送番組の供給を受けてする 放送(前号の放送を除く。) 2 前項の場合において、同項各号に掲げる放送において実演が放送されたときは、 当該各号に規定する放送事業者は、相当な額の報酬を当該実演に係る第九十二条第 一項に規定する権利を有する者に支払わなければならない。  (商業用レコードの二次使用) 第九十五条 放送事業者及び有線放送事業者(以下この条及び第九十七条第一項に おいて「放送事業者等」という。)は、第九十一条第一項に規定する権利を有する 者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いた放送又は有線放送を 行つた場合(当該放送又は有線放送を受信して放送又は有線放送を行つた場合を除 く。)には、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。次項及び第三項に おいて同じ。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。 2 前項の規定は、実演家等保護条約の締約国であつて、実演家等保護条約の規定 に基づき実演家等保護条約第十二条の規定を適用しないこととしている国の国民を レコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家については、適 用しない。 3 第八条第一号に掲げるレコードについて実演家等保護条約の締約国により与え られる実演家等保護条約第十二条の規定による保護の期間が第一項の規定により実 演家が保護を受ける期間より短いときは、当該締約国の国民をレコード製作者とす るレコードに固定されている実演に係る実演家が同項の規定により保護を受ける期 間は、第八条第一号に掲げるレコードについて当該締約国により与えられる実演家 等保護条約第十二条の規定による保護の期間による。 4 第一項の二次使用料を受ける権利は、国内において実演を業とする者の相当数 を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定す るものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができる。 5 文化庁長官は、次に掲げる要件を備える団体でなければ、前項の指定をしては ならない。  一 営利を目的としないこと。  二 その構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。  三 その構成員の議決権及び選挙権が平等であること。  四 第一項の二次使用料を受ける権利を有する者(以下この条において「権利者」 という。)のためにその権利を行使する業務をみずから的確に遂行するに足りる能 力を有すること。 6 第四項の団体は、権利者から申込みがあつたときは、その者のためにその権利 を行使することを拒んではならない。 7 第四項の団体は、前項の申込みがあつたときは、権利者のために自己の名をも つてその権利に関する裁判上又は裁判外の行為を行なう権限を有する。 8 文化庁長官は、第四項の団体に対し、政令で定めるところにより、第一項の二 次使用料に係る業務に関して報告をさせ、若しくは帳簿、書類その他の資料の提出 を求め、又はその業務の執行方法の改善のため必要な勧告をすることができる。 9 第四項の団体が同項の規定により権利者のために請求することができる二次使 用料の額は、毎年、当該団体と放送事業者等又はその団体との間において協議して 定めるものとする。 10 前項の協議が成立しないときは、その当事者は、政令で定めるところにより、 同項の二次使用料の額について文化庁長官の裁定を求めることができる。 11 第七十条第二項、第五項及び第六項並びに第七十一条から第七十四条までの 規定は、前項の裁定及び二次使用料について準用する。この場合において、第七十 条第二項中「著作権者」とあるのは「当事者」と、第七十二条第二項中「著作物を 利用する者」とあるのは「第九十五条第一項の放送事業者等」と、「著作権者」と あるのは「同条第四項の団体」と、第七十四条中「著作権者」とあるのは「第九十 五条第四項の団体」と読み替えるものとする。 12 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十 四号)の規定は、第九項の協議による定め及びこれに基づいてする行為については、 適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合及び関連事業者の利益を不当 に害することとなる場合は、この限りでない。 13 第四項から前項までに定めるもののほか、第一項の二次使用料の支払及び第 四項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。  (貸与権等) 第九十五条の二 実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸 与により公衆に提供する権利を専有する。 2 前項の規定は、最初に販売された日から起算して一月以上十二月を超えない範 囲内において政令で定める期間を経過した商業用レコード(複製されているレコー ドのすべてが当該商業用レコードと同一であるものを含む。以下「期間経過商業用 レコード」という。)の貸与による場合には、適用しない。 3 商業用レコードの公衆への貸与を営業として行う者(以下「貸レコード業者」 という。)は、期間経過商業用レコードの貸与により実演を公衆に提供した場合に は、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に相当な額 の報酬を支払わなければならない。 4 前条第四項から第十三項までの規定は、前項の報酬を受ける権利について準用 する。この場合において、同条第九項中「放送事業者等」とあり、及び同条第十一 項中「第九十五条第一項の放送事業者等」とあるのは、「第九十五条の二第三項の 貸レコード業者」と読み替えるものとする。 5 第一項に規定する権利を有する者の許諾に係る使用料を受ける権利は、前項に おいて準用する前条第四項の団体によつて行使することができる。 6 前条第六項から第十三項までの規定は、前項の場合について準用する。この場 合においては、第四項後段の規定を準用する。    第三節 レコード製作者の権利  (複製権) 第九十六条 レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。  (商業用レコードの二次使用) 第九十七条 放送事業者等は、商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた 場合(当該放送又は有線放送を受信して放送又は有線放送を行つた場合を除く。) には、そのレコード(第八条第一号から第三号までに掲げるレコードで著作隣接権 の存続期間内のものに限る。)に係るレコード製作者に二次使用料を支払わなけれ ばならない。 2 第九十五条第二項の規定は、前項に規定するレコード製作者について準用し、 同条第三項の規定は、前項の規定により保護を受ける期間について準用する。この 場合において、同条第二項及び第三項中「国民をレコード製作者とするレコードに 固定されている実演に係る実演家」とあるのは「国民であるレコード製作者」と、 同項中「実演家が保護を受ける期間」とあるのは「レコード製作者が保護を受ける 期間」と読み替えるものとする。 3 第一項の二次使用料を受ける権利は、国内において商業用レコードの製作を業 とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文 化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができ る。 4 第九十五条第五項から第十三項までの規定は、第一項の二次使用料及び前項の 団体について準用する。  (貸与権等) 第九十七条の二 レコード製作者は、そのレコードをそれが複製されている商業用 レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。 2 前項の規定は、期間経過商業用レコードの貸与による場合には、適用しない。 3 貸レコード業者は、期間経過商業用レコードの貸与によりレコードを公衆に提 供した場合には、当該レコード(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る レコード製作者に相当な額の報酬を支払わなければならない。 4 前条第三項の規定は、前項の報酬を受ける権利の行使について準用する。 5 第九十五条第五項から第十三項までの規定は、第三項の報酬及び前項において 準用する前条第三項に規定する団体について準用する。この場合においては、第九 十五条の二第四項後段の規定を準用する。 6 第一項に規定する権利を有する者の許諾に係る使用料を受ける権利は、第四項 において準用する前条第三項の団体によつて行使することができる。 7 第五項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第五項中 「第九十五条第五項」とあるのは、「第九十五条第六項」と読み替えるものとする。    第四節 放送事業者の権利  (複製権) 第九十八条 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信し て、その放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する 方法により複製する権利を専有する。  (再放送権及び有線放送権) 第九十九条 放送事業者は、その放送を受信してこれを再放送し、又は有線放送す る権利を専有する。 2 前項の規定は、放送を受信して有線放送を行なう者が法令の規定により行なわ なければならない有線放送については、適用しない。  (テレビジョン放送の伝達権) 第百条 放送事業者は、そのテレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送 を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利を専 有する。    第五節 有線放送事業者の権利  (複製権) 第百条の二 有線放送事業者は、その有線放送を受信して、その有線放送に係る音 又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権 利を専有する。  (放送権及び再有線放送権) 第百条の三 有線放送事業者は、その有線放送を受信してこれを放送し、又は再有 線放送する権利を専有する。  (有線テレビジョン放送の伝達権) 第百条の四 有線放送事業者は、その有線テレビジョン放送を受信して、影像を拡 大する特別の装置を用いてその有線放送を公に伝達する権利を専有する。    第六節 保護期間  (実演、レコード、放送又は有線放送の保護期間) 第百一条 著作隣接権の存続期間は、次の各号に掲げる時に始まり、当該各号の行 為が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時をもつて満了す る。  一 実演に関しては、その実演を行なつた時  二 レコードに関しては、その音を最初に固定した時  三 放送に関しては、その放送を行なつた時  四 有線放送に関しては、その有線放送を行つた時    第七節 権利の制限、譲渡及び行使等並びに登録  (著作隣接権の制限) 第百二条 第三十条第一項、第三十一条、第三十二条、第三十五条、第三十六条、 第三十七条第二項、第三十八条第二項及び第四項、第四十一条、第四十二条並びに 第四十四条(第二項を除く。)の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レ コード、放送又は有線放送の利用について準用し、第三十条第二項の規定は、著作 隣接権の目的となつている実演又はレコードの利用について準用し、第四十四条第 二項の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード又は有線放送の利用 について準用する。この場合において、同条第一項中「第二十三条第一項」とある のは「第九十二条第一項、第九十九条第一項又は第百条の三」と、第四十四条第二 項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項又は第百条の三」と読み 替えるものとする。 2 前項において準用する第三十二条、第三十七条第二項又は第四十二条の規定に より実演若しくはレコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(以下 「実演等」と総称する。)を複製する場合において、その出所を明示する慣行があ るときは、これらの複製の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、そ の出所を明示しなければならない。 3 第三十九条第一項又は第四十条第一項若しくは第二項の規定により著作物を放 送し、又は有線放送することができる場合には、その著作物の放送又は有線放送を 受信してこれを有線放送し、又は影像を拡大する特別の装置を用いて公に伝達する ことができる。 4 次に掲げる者は、第九十一条第一項、第九十六条、第九十八条又は第百条の二 の録音、録画又は複製を行つたものとみなす。  一 第一項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、 第三十七条第二項、第四十一条、第四十二条又は第四十四条第一項若しくは第二項 に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された実演等 の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコードに係る音若し くは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を公衆に提示した者  二 第一項において準用する第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又 は録画物を保存した放送事業者又は有線放送事業者  (著作隣接権の譲渡、行使等) 第百三条 第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について、第六十二条第一 項の規定は著作隣接権の消滅について、第六十三条の規定は実演、レコード、放送 又は有線放送の利用の許諾について、第六十五条の規定は著作隣接権が共有に係る 場合について、第六十六条の規定は著作隣接権を目的として質権が設定されている 場合について、それぞれ準用する。  (著作隣接権の登録) 第百四条 第七十七条及び第七十八条(第二項を除く。)の規定は、著作隣接権に 関する登録について準用する。この場合において、同条第一項及び第三項中「著作 権登録原簿」とあるのは、「著作隣接権登録原簿」と読み替えるものとする。