第三章 出版権  (出版権の設定) 第七十九条 第二十一条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権 者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者 に対し、出版権を設定することができる。 2 複製権者は、その複製権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権 を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。  (出版権の内容) 第八十条 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、そ の出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法によ り文書又は図画として複製する権利を専有する。 2 出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に 別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版があつた日から三年を経 過したときは、複製権者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物を全集その他の 編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製するこ とができる。 3 出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾するこ とができない。  (出版の義務) 第八十一条 出版権者は、その出版権の目的である著作物につき次に掲げる義務を 負う。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。  一 複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれ に相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務  二 当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務  (著作物の修正増減) 第八十二条 著作者は、その著作物を出版権者があらためて複製する場合には、正 当な範囲内において、その著作物に修正又は増減を加えることができる。 2 出版権者は、その出版権の目的である著作物をあらためて複製しようとすると きは、そのつど、あらかじめ著作者にその旨を通知しなければならない。  (出版権の存続期間) 第八十三条 出版権の存続期間は、設定行為で定めるところによる。 2 出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初 の出版があつた日から三年を経過した日において消滅する。  (出版権の消滅の請求) 第八十四条 出版権者が第八十一条第一号の義務に違反したときは、複製権者は、 出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。 2 出版権者が第八十一条第二号の義務に違反した場合において、複製権者が三月 以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらず、その期間内にその履行が されないときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることが できる。 3 複製権者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなつた ときは、その著作物の出版を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消 滅させることができる。ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあ らかじめ賠償しない場合は、この限りでない。  (出版権の消滅後における複製物の頒布) 第八十五条 出版権の存続期間の満了その他の理由により出版権が消滅した後にお いては、当該出版権を有していた者は、次に掲げる場合を除き、当該出版権の存続 期間中に作成した著作物の複製物を頒布することができない。  一 設定行為に別段の定めがある場合  二 当該出版権の存続期間中に複製権者に対しその著作物の出版に係る印税その 他の対価を支払つている場合において、その対価に対応する部数の複製物を頒布す るとき。 2 前項の規定に違反して同項の複製物を頒布した者は、第二十一条又は第八十条 第一項の複製を行なつたものとみなす。  (出版権の制限) 第八十六条 第三十条第一項、第三十一条、第三十二条、第三十三条第一項(同条 第四項において準用する場合を含む。)、第三十四条第一項、第三十五条、第三十 六条第一項、第三十七条第一項、第三十九条第一項、第四十条第一項及び第二項、 第四十一条、第四十二条、第四十六条並びに第四十七条の規定は、出版権の目的と なつている著作物の複製について準用する。この場合において、第三十五条及び第 四十二条中「著作権者」とあるのは「出版権者」と読み替えるものとする。 2 前項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第四 十一条又は第四十二条に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受 けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公 衆に提示した者は、第八十条第一項の複製を行つたものとみなす。  (出版権の譲渡等) 第八十七条 出版権は、複製権者の承諾を得た場合に限り、譲渡し、又は質権の目 的とすることができる。  (出版権の登録) 第八十八条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができな い。  一 出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号におい て同じ。)変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処 分の制限  二 出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は出版権 若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限 2 第七十八条(第二項を除く。)の規定は、前項の登録について準用する。この 場合において、同条第一項及び第三項中「著作権登録原簿」とあるのは、「出版権 登録原簿」と読み替えるものとする。